しつけを用いない玉縁始末の方法です。
まち針もしつけも必要とせず、最低限のアイロンとミシン作業だけで仕上げるので、バインダーを使用しなくても大変手早く仕上がります。
手早く仕上がりますが、美しく仕上げる為には練習も必要です。
この方法は、しつけを用いて玉縁始末の感覚を十分に養ってから取り組むことをおすすめします。
また、バイアステープの伸ばしやイセ加減がわからないという方は下記リンク先記事にも目を通してみて下さい。
バイアステープの縫製トラブル6選/事例4
バイアステープの縫製トラブル6選/事例5
玉縁始末(フラットテープ使用)内カーブ
玉縁始末(フラットテープ使用)外カーブ
内カーブ
1.地縫いミシンをかける
地縫いミシンです。身頃とバイアステープは中表に合わせて下さい。
右手でテープを伸ばしつつ、左手で身頃生地を回しながら縫い合わせます。バイアステープを引っ張るので、テープは起き上がってきます。テープを引く加減はカーブの始点・終点付近とカーブ頂点付近では異なります。下図のイラストは力加減の配分量を可視化したものですが、赤い三日月型の図形のように徐々に加減を強くしていき、徐々に弱くしていきます。カーブが最も急になる頂点付近が最も強くテープを引くことになるので、バイアステープは頂点付近が最も立ち上がりが強くなるはずです。カーブが左右対象であれば力加減も左右対称にならなければなりません。
2.アイロンで玉縁を形成する
玉縁をアイロンで形作ります。地縫いミシンのキワに軽くアイロンをかけたら縫い代をバイアステープでくるみ込みながらアイロンをかけていきます。工程1でカーブの形状に見合った引き加減で縫い合わせが出来ているのであれば、テープは自然にくるんと丸まり、あるべき場所におさまろうとします。裏面側の玉縁幅は地縫いミシンが隠れるギリギリの位置を目指してください。
物理上のことだけを言えば、次の工程のコバステッチは地縫いミシンよりも玉縁側にかかりますので、裏面側の玉縁は地縫いミシンのライン上にぴったり並んでいれば外れることはありません。ではなぜ外れてしまうのか?工程1でテープを伸ばしながらミシンをかけているという事は、下図イラストのB線の位置でもバイアステープを伸ばしながら玉縁幅を整えるという事になります。
この時に伸ばされたテープは、元に戻ろうとする力が働いてほんのわずかですが玉縁幅が狭くなります。そうするとアイロンをかけた時にはきちんと玉縁幅が確保できていたのに、いざミシンをかけてみたらカーブで外れているという事が起こりやすくなります。
これらを踏まえてカーブ付近ではほんの僅か広めに玉縁幅を整えます。とは言え、これらは数値に表すとおそらく0.2㎜~0.3㎜程度ではないでしょうか。通常で言えば誤差の範囲です。こうなってくるともう自身の目の感覚だけが頼りになります。具体的に何ミリという事ではなく、アイロンがけの際に以上のことを意識しながらやってみると、感覚がつかみやすくなるのではないでしょうか。
※1 工程1で既にテープを伸ばしながら縫い合わせてあるので、ここでの伸ばし分はわずかです。
3.表側からコバステッチをかける
続いて表側から玉縁のキワにコバステッチをかけていきます。薄手の生地の場合はほんのり透けて見えるので裏面側の状態が確認しやすいのですが、透け感の無い生地の場合は要所要所で裏側の状態を確認しながらステッチをかけます。表側からは、裏面側の玉縁のキワがどこにあるのかを指先の感覚を頼りに探りながら進めましょう。
4.内カーブの仕上がり
玉縁始末の出来上がりを表裏で比較してみました。動画からの切り出し画像で恐縮なのですが、裏面側はわずかに玉縁幅が広い箇所があります。これくらいならギリギリ許容範囲といった感じでしょうか。
外カーブ
1.地縫いミシンをかける
地縫いミシンです。身頃とバイアステープは中表に合わせて下さい。
今度は内カーブとは逆に、バイアステープをイセ込みながら縫い合わせます。イセるか伸ばすかの違いはあれど、考え方は内カーブと同じです。カーブの頂点付近で最もイセ分が多くなります。バイアステープはとても伸びやすいので、気付かないうちに伸ばし加減で縫い合わせていることが良くあります。カーブが急なのにあまりイセ込まなくてもすんなり縫えてしまったという時は、テープが伸びていないか良く確認しましょう。
2.アイロンで玉縁を成形する
玉縁をアイロンで形作ります。地縫いミシンのキワに軽くアイロンをかけたら縫い代をバイアステープでくるみ込みながらアイロンをかけていきます。この時点で縫い代が起き上がってくる場合はイセ分量が不足しています。ほどいて縫いなおしてください。イセ分量が適正であれば内カーブ同様にテープをくるむとくるんと丸まって適正位置におさまろうとしますので、素直に裏面側の玉縁幅を整えます。内カーブでは裏面側を伸ばしながら整えましたが、外カーブの場合はイセ込みながら玉縁幅を整えます。この時、内カーブのようにバイアステープの反動で玉縁幅が狭くなるような事は起こりにくいかわりに、テープのイセ込みが甘いとぷかぷかと玉縁が浮き気味になります。そのまま縫い合わせると裏面側の玉縁が動いて外れやすくなります。アイロンを持っていない方の指先でイセ分が逃げないように抑えながらしっかりと潰してください。
3.表側からコバステッチをかける
表側から玉縁のキワにコバステッチをかけていきます。ミシンのかけ方は内カーブと同様ですので割愛します。
4.外カーブの仕上がり
動画で見る
補足
ここでは内カーブ、外カーブ共に工程1の地縫いミシンでは身頃の表面にテープを乗せるように縫い合わせています(中表にあわせるという事)。これとは別に、工程1で身頃の裏面にテープを乗せて(身頃裏面とテープ表面をあわせる)地縫いミシンをかける場合もあります。
これはどちらが正解という類のものではありませんが、工程3で落としミシンで仕上げるのであれば工程1では中表で縫わないといけません。コバステッチ仕上げの場合はどちらでもOK。
個人的には、コバステッチ仕上げの場合も表・裏共に均一に綺麗にコバステッチをかける為には、工程1では中表にして縫う必要があると考えています。これはあくまでも仕上がりの精度を求めた結果ですので、個々の求める仕上がり精度に応じて縫いやすいように工夫してほしいと思います。ご自身で判断できるようになった頃には、もはやビギナーさんは卒業されている事と思います。
さいごに
内カーブと外カーブ、いずれの場合も正確な地縫い幅、イセ・伸ばしの分量、裏面側の玉縁幅を決めるアイロン、仕上げのコバステッチ、ステッチをかける際の裏面側玉縁の確認、これらすべてが正確に行われないと美しく仕上がりません。
ミシンが外れてしまう・裏面の玉縁幅が揃わないといったトラブルでは、必ずどこかのバランスが崩れています。いつもなんとなく勘で縫って失敗するという方は、いったん思考をフラットに戻して改めて基本に忠実にやってみて下さい。
これは玉縁に限ったことではなく洋裁全般に言える事ですが、お一人お一人それぞれ癖があり、それぞれに失敗するポイントも理由も異なります。残念ながら、目の前で縫っている所をみない事にははっきりとしたアドバイスが出来ませんしそれは不可能な事でもあります。だからこそ、失敗した時にはご自身で判断しやすいように出来るだけポイントを言語化してみました。ぜひご自身で答えにたどり着いて欲しいと思います。
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