ニットの地直しその2

地直しと地の目

昨日に引き続き、ニットに関しての記事です。

昨日の記事では、何かと迷いがちなニットの地直しのギモンや斜行について触れましたが、本日はそこを踏まえたうえでどのような地直しをするかという選択、単糸と双糸、収縮率とパターン調整について簡単に解説します。

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縮絨方法の選択

さて。ニットの地直しその1では、あからさまに個人的な主観で解説しましたが、ここからは「結局どうしろっちゅーーねんヾ(。`Д´。)ノ彡☆ブーブーッ!!」という話。
navyの個人的な見解は、これらをすべてひっくるめてイイトコ取りしちゃおうと思います。選択肢は7つ。

 

  1. 天竺ボーダーの場合は柄を優先して出来るだけ斜行しないように水通しはしない。洗濯で縮むことを考慮して仕上がりをやや大きめにする。(洗濯後に斜行するのである程度のゆがみは避けられません)
  2. ウール100%ニットやウール混紡ニット(お出かけ用ジャケットやワンピース類)は手洗いかクリーニングと割り切って水通ししない。
  3. 国産メーカー生地のきちんと作られている生地や洗い加工がされている生地などはさほど大きく縮まない場合が多いので水通ししない。
  4. 毎日ザブザブ洗いたいから水通しする。(天竺ボーダーとウール・シルクを除く)
  5. 普段からタンブラー乾燥をしているから、水通ししたうえでダンブラーで乾燥させてから使う(天竺ボーダーとウール・シルクを除く)
  6. 毎日洗濯したい。でもジャストサイズで作りたい。でもこれほんとに縮まないんだろうか???どうしよう・・・・→下図のように生地の端を10㎝角に切って、それを水通しして乾かしてみてから収縮率や斜行の有無を確認して決める。ニット縮絨寸法は10㎝角とは限りませんが、これより小さいと判断しにくいです。本当は大きい布で試した方が正確な数値が取れます。水通し+乾燥後に測ってみて9㎝だったとしたら1割詰まっているので収縮率は10%ということになりますね。
  7. 面倒なこと考えたくない。アバウトサイズで作る!

 

 

 

と、いうことで上記1~7のうち、当てはまる項目をチョイスして水通しをするかしないか決めてみてください。

 

単糸と双糸

お気づきの方も多いかとは思いますが、曲者は天竺ボーダーです(^^;

一般財団法人カケンテストセンター(旧称:財団法人日本化学繊維検査協会)によれば、単糸使いの綿・麻の天竺・鹿の子・シングルジャージーで斜行が起きやすく、又、編立時のねじれを仕上げ工程で矯正加工した場合、洗濯後に製品のねじれが発生しやすいとしています。これは頭に入れておきましょう。生地を購入する際の目安にもなります。

1.クレームの状況
苦情内容:綿100%の単糸使いの天竺のTシャツを初めて洗濯したところ、脇縫い部にねじれ(斜行)が生じました。
組成表示:綿100%
3.なぜこの現象が起きるのですか
(1)ニットの編目を構成する糸は、製造工程で撚りが加えられているため、特に繊維が水分を吸収し膨張すると、この撚りと逆方向にトルク(戻ろうとする力)が働いて編地がねじれます。
(2)編地を編成する際の糸の給糸数が多いとねじれが発生しやすいです。
(3)仕上げ工程で編目を矯正し裁断縫製した場合は、セットが不良であると着用洗濯で編目が元に戻るためにねじれます。
4.このクレームが発生し易い素材の製品
(1)綿・麻素材に多く発生します。
(2)組織としては天竺、鹿の子、シングルジャージ
5.このクレームが発生し易い条件、部位等
(1)単糸使いのニット製品は、糸に一定方向の回転力が働いているために生地全体がよじれたような状態となります。
(2)洗濯時:繊維が水分を吸収し膨潤すると、撚り方向と逆の方向に力が働きねじれが生じます。
編立時のねじれを仕上工程で矯正加工 (真直ぐに補正)した場合、洗濯後に製品のねじれが発生し易いです。
(3)乾燥時:吊り干しよりタンブル乾燥のほうがねじれが大きいです。

単糸使いか双糸使いかは見てもわかりません。親切な生地屋さんは30/1とか、20/2とかの表示を出しておいてくれています。この表示の「/」の後の数字が1の場合は単糸、2の場合は双糸です。単糸と双糸の違いについては言及しませんが、もしも選択肢があるのであれば双糸を選ぶと斜行は比較的少なくなります。(特に天竺ボーダーとかね)

パターンの調整

水通しをせずに作品を制作する場合、その後のお手入れ方法によって出来上がりのサイズを変えるコツも必要です。面倒じゃない人は、上記の6の方法でサンプル生地に水通しをしてみて縦と横の収縮率を出せば、洗い上がりはほぼ狙い通りのサイズになるでしょう。

斜行サイズ調整

生地の収縮率を割り出せたら、実際にパターンを修正していきます。左図ではTシャツを例に計算しています。Tシャツの場合は収縮率が大きく関係してくるのは縦寸が着丈と袖丈、横寸が身幅と袖幅だと思いますので、それぞれどのくらいパターンを大きくするのかを割り出してください。

左図の例だと縦地の収縮率は5%です。着丈が45㎝になるようにしたいので、着丈寸法に105%をかけると47.25㎝。つまり2.25㎝ほど着丈を伸ばしてパターンを作り直してやる必要があるわけです。

この計算を着丈・袖丈・身幅・袖幅それぞれ計算して図の破線のように追加してやります。

図では襟ぐり、袖ぐり、袖山には変更を加えていません。理由は単純で、ラインを引くのが難しいからです。厳密にいえば襟ぐりや袖ぐりもすべて調整しなくてはならないのですが、製図の知識のない方には難しすぎると思うので、一番お手軽な修正箇所として図のようにしてみました。

これでもちょっと・・・という方は、パターンをそのまま拡大コピーしてしまった方が簡単かもしれませんね。もしくはワンサイズ大きいパターンを使用するなど、それぞれ工夫してみてください(^^)

 

ここで一つ注意点が。通常、生地の収縮率は縦と横では比率が違います。必ず縦寸と横寸を計測してください。また、例のように10%も縮むことはそう多くはありません。収縮率の小さい生地の場合はそれほど神経質にならなくても大丈夫です。が、ワンピースなどの着丈の長いものの場合は10%も縮むと大変です。着丈100㎝のワンピースだと10㎝も短く仕上がってしまいます。5%でも5㎝ほど。面積の大きいものを制作する場合は十分検討して決めてくださいね。

最後に。。。

水通しする場合でもそうですが、特にタンブラー乾燥機を使用する場合はどうしても風合いが変わってしまう場合があります。言ってしまえば生地を傷めつけているとも言えますね。ですが、結局その後のお手入れで洗濯機や乾燥機を使うのであれば、何も考えず最初から詰まるだけ詰めてしまうのも一つの手です。あまり神経質になるとハゲてしまいます。

初めてニットに挑戦する時や不安な方は天竺ニットを避けて、少し厚みのあるスムースニットやダンボールニット、ポンチ等を使ってみるといいと思います。

最後の注意点としては、水通しが必要なのは綿・麻のみです。同じ天然繊維でもウールは水通ししません。これは布帛・ニットともに共通です。ウール製品は洗濯機で洗うほどに縮んでいくので、おしゃれ着洗剤で手洗いかクリーニングと割り切りましょう。(圧縮ウールのように縮ませる場合は別です)

それから、化繊も水通しの必要はありません。化繊は水で縮むことはないのであまり問題はないはずです。なので綿100%よりも化繊との混紡生地の方が縮みにくいということになります。ただし、化繊は熱に弱い傾向にあるのでアイロンは中温~低温にしましょう。

 

ちなみに。navyは天竺ボーダーだけは収縮率を計算して、ほかのものは洗濯機+乾燥機(もしくは天日干し)にポイッとしてます。めんどうだから。

最近では生地屋さんでも国産の双糸の天竺ボーダーを取り扱うお店がだいぶ増えてきました。ちょっと値段がお高いのですが(^^;)

単糸の天竺ボーダーで散々な目にあったという方は一度双糸のボーダーを購入して見てください。しっかりとした既製服のような作品ができますよ♪

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