バイアステープとは

バイアステープとはバイアステープのコツ
バイアステープとは

「布目に対し斜め、一般的には45度の角度に裁ってつくられた細い布。縁どり、玉縁、縫い代の始末に用いる」(文化出版局:ファッション辞典参照)

言わずと知れたバイアステープ。辞書では上記のように定義されています。
思い出してみて下さい。ベビー服やベビースタイ、入園入学グッズ、はたまたご自身の洋服等。皆さんが洋裁を始めて間もない、まだ右も左も良くわからない頃にバイアステープと出会いませんでしたか?そしてバイアステープが、玉縁が、バイアスの見返しが大嫌いになりませんでしたか?

バイアステープを使用した衿ぐりや袖ぐり、裁ち端の始末はいわゆる簡単洋裁では大変ポピュラーな始末の方法です。それは衿付けや袖付けに比べるとパーツも少なく、ロックミシンも使わず手軽に始末出来るからなのですが、それは初めてトライする人でも簡単できれいに縫えるという事とは別なのです。
ベビースタイを玉縁始末した事がある方ならお分かりかと思いますが、あのスタイの急カーブを美しく仕上げるのは至難の業です。
なぜ、何が難しいのだろうか?バイアステープとは何者ぞ!?というところから、段階を追って紐解いていきたいと思います。

スポンサーリンク

まずはバイアステープについてざっくりと

bias(バイアスもしくはバイヤス)を単純に翻訳すると「偏り」となりますが、洋裁の場合は偏って(斜めに)裁断された布を指します。
冒頭の定義の通り、バイアステープは生地を45度の角度で細く裁断したひも状のテープのことです。主に、裁ち端をくるみこんで縫い代の始末をしたり、装飾する目的で使用される場合が多いです。玉縁始末・パイピング・バインダー始末などと呼称されています。

バイアステープを使用するのは縫い代の始末だけではなく、衣服の切り替え線にバイアステープを挟み込んで装飾する場合にも使われます。この時に使用するバイアステープには、中にコードを挟み込んでふくらみを持たせる場合が多く、予めコードを仕込んだテープをパイピングコードなどと呼称して市販もされています。
このあたりの呼称については縫製の現場や洋裁本、メーカーなどでばらつきがあるのが現状ですので、曖昧さ回避のために下図の通りに簡単に分類しておくこととします。

バイアステープを使用した始末の呼称
バイアステープを使用した始末の呼称

A:玉縁始末

衿ぐりや袖ぐり、その他裁ち端の縫い代始末に用いる。表からバイアステープが見えている状態。玉縁(たまぶち)始末・パイピング始末・バインダー始末などと呼称。
バインダーというのは玉縁始末専用のミシンアタッチメントの事で、そこから縫製工場やアパレルメーカー等ではバインダー始末という呼び方をされるようになってきたと思われます。また、Bのパイピングと混同しないように区別したという経緯もあります。ここでは表現上、誤解のないように玉縁始末という呼び方で進めます。
特に、縫製業界の用語をご存じない方とのやり取りでは、日本語で表現しておいた方が誤解が少ないのではないでしょうか。

B:パイピング始末

衣服や鞄、雑貨類の切り替え線に挟み込んで装飾としたり強度を持たせたりする目的で使用される。中にコードを仕込んでいる場合が多いので、コードパイピングと呼称したり、単にパイピングと呼称する場合もある。
Aのパイピングと混同されやすいので、ここではこちらをパイピングという呼び方で進めます。

※パイピングという名称は英和辞典によれば衣服の飾り、玉縁、縁飾りなどの総称の事ですので、どちらもパイピングに含まれます。

C:裏バイアス始末

テープが表から見えないように始末する方法。見返し代わりとして用いる。この始末は裏バイアス始末・裏バインダー始末などと呼称されている。
ここでは裏バイアス始末という呼び方で進めます。呼称の違いにそれほど大きな意味はありませんが、縫製のお仕事として請ける場合はお互いの意思疎通が出来ていないと仕上がりが異なってしまう場合もありますので一応覚えておくと良いでしょう。
英語表記が元となるpipingとbindingの違いというのは個々の縫製現場やメーカー・学校などで解釈が若干異なる場合がありますが、どちらが正しいというような性質のものではありません。英語の意味を突き詰めてしまうと、コードパイピングは「コードをテープでラップ(wrap/包む・くるむ)してパイピングコードをバインディングする」という事になり、大変混乱してしまいます。市販されているパターンにも、工業用で扱われるパターンにも、必ずパターンの中か縫製指示書に詳細な指示が記載してあるはずですので、良く確認する癖を付けましょう。

バイアステープの特徴

さてこのバイアステープですが、最大の特徴は布帛生地を斜めに裁断しているという点。しかも角度を縦又は横の地の目に対して45度前後に限定しています。(下図参照)この45度という角度がポイントです。この角度の事を正バイアス地とも呼びます。

バイアステープの地の目
バイアステープの地の目

通常、生地は縦地に地の目を通して裁断されます。そうすることで余計な生地の伸びや歪みを防止できるのですが、地の目が曲がってしまうと生地が伸びたり歪んだりという事が起きやすくなります。バイアステープというのは、この伸びや歪みを逆に利用しして美しく縫い上げる為のアイテムなのです。本来伸びないはずの布帛生地を正バイアスで裁断することにより、共布でありながら湾曲した生地端を美しく包み込むことが可能になります。

地の目の違いによるテープの馴染み方の違い
地の目の違いによるテープの馴染み方の違い

上図のテープABCで比較してみましょう。Aが横の地の目で裁断したもの。Bが20~30度くらいの角度で裁断したもの。Cが正バイアス(45度)で裁断したものです。
湾曲させてみると良く変わりますが、Aは全く馴染みません。ですので縦地又は横地で裁断されたテープは直線の箇所以外では使用に適さないという事です。BはAに比べると幾分馴染みが良いのですが、やはりあまり馴染んでいません。それに比べるとCはほとんど浮き分が出ていないのがわかります。バイアステープがカーブに自在に馴染む秘密はここにあります。
どういうことか、もう少し詳しく見ていきましょう。下図のCとDは共に正バイアスで同じ幅、同じ長さで裁断したテープです。

バイアステープ/くせ取り前後の違い
バイアステープ/くせ取り前後の違い

Dは裁断したままの状態、Cはアイロンでくせ取りをした後の状態です。一見して幅も長さも変化しているのが見て取れるかと思います。これだけ湾曲させても浮き分が出ていません。テープが細ければもっと急激に湾曲していても無理なくなじみます。

引き加減の強弱によるバイアステープ幅の変化
引き加減の強弱によるバイアステープ幅の変化

バイアステープは予めアイロンで伸ばしたりくせ取りをしてから使用するものなのですが、上図Cを見てみるとテープ幅が一定ではありません。これは裁断したバイアステープをアイロンで伸ばしたものなのですが、その際にテープを引く加減が一定でないとこのようになります。あまりにも伸ばし過ぎてしまうとテープ幅が細くなりすぎて、くるみ込む為の幅が不足したり、綺麗にカーブに沿わせにくくなったりします。実践的な事は今後、動画にて別途解説します。最後に、下図をみてみましょう。

バイアステープ/湾曲による地の目の変化
バイアステープ/湾曲による地の目の変化

これはくせ取りしたテープとしていないテープの拡大図です。赤い線が布目です。テープが湾曲するという事は、地の目も放射状に曲線を描いて湾曲します。湾曲させたカーブの外側は寸法が伸び、内側は縮みます。不安定なバイアスの地の目はここで最大限に生かされるのです。そしてアイロンだけではなく、この湾曲具合によってもテープ幅は変化します。カーブが急であればあっただけ、カーブ外側の寸法と内側の寸法の差が開きます。そのぶん、強めのくせ取りが必要になり、結果としてカーブ付近ではテープ幅が細くなります。

さいごに

あまり楽しい内容ではありませんが、ビギナーの方、バイアステープが嫌いな方にこそ読んで知っていただきたい内容をまとめてみました。理屈を知れば製作に必ず生きてきます。バイアステープ攻略の鍵は、地の目を自在に動かすこと。そのためには生地の性質を知ることとアイロンの使い方がキモになってきます。裁断したバイアステープは、通常そのままでは使用しません。実践的なバイアステープの作り方や縫い方については、順を追って記事をまとめていきます。長々と理屈を捏ねてきましたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました